ただし、更地にすると売却に有利だからとあらかじめ建物の取壊しを行っていた場合については、任意の取壊しとなり、譲渡費用とはいえなくなります。譲渡のために直接かかった費用か否かがポイントですので、譲渡契約書において取壊しを条件として書き記す等して、取壊しが譲渡のために行われたということを明瞭にしておきましょう。
譲渡所得の計算については、土地や建物の売却をした金額から取得費と譲渡費用を控除します。土地や建物の売却を行うために直接要した費用のことを譲渡費用と呼び、譲渡費用には、建物の取壊し費用のほか、建物の未償却残高相当額も含まれます。ゆえに、譲渡費用については、次のように計算します。
建物の取得費(未償却残)+取壊しや除却による支出費用-取壊しや除却により発生した廃材の処分価格
また、譲渡費用の主なものは、次の通りといえます。
1.不動産を売却するために直接かかった費用
・売買契約書の土地や建物を売るために支払った仲介手数料
・印紙税で売主が負担したもの
・売却のための広告料
・測量費
・売却交渉のための交通費や宿泊費
・いろいろな調査のための費用(アスベスト調査や耐震診断等)
2.不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用
・貸家を売るために借家人に立ち退いてもらうときに支払う立退料
・土地等を売るためにその上にある建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
・有利な条件で譲渡するために契約を解除したときの違約金
上記のように、売却するために直接かかった費用を譲渡費用といいます。それゆえ、固定資産税や都市計画税、家財等の引越し費用、抵当権抹消登記にかかった費用、相続の名義変更登記費用、売却代金の取り立てにかかる費用(弁護士費用等)、譲渡所得を申告するために払った税理士報酬といったものは、譲渡費用に含まれません。